大阪家庭裁判所 昭和57年(家)1965号 審判 1982年5月21日
申立人 堀尾茂一
相手方 山本すみ子
事件本人 山本由香 外一名
主文
事件本人由香同和宏の親権者をいずれも父である申立人に指定する。
理由
一 申立人は主文同旨の審判を求めるものであるところ、本件および当裁判所昭和五七年(家)第一六四号同一六五号各後見人選任、同年(家イ)第五二〇号、同第五二一号各認知の申立事件記録によれば次の各事実を認めることができる。
1 事件本人両名はいずれも相手方である母山本すみ子が当時同棲関係にあつた申立人堀尾茂一との間に出産したものであるが、すみ子は戸籍上韓国人朴外秀の妻であつたため、そのままで出生を届出れば右二子とも韓国籍とされてしまうため、それをおそれて出生届をしないままでいたもので、その後すみ子はまたも右申立人方を出奔して現在その所在は不明である。事件本人らはいずれもその後順調に成育してきたが出生届がなされず無籍のままであるため申立外岡田安子が後見人に選任(上記一六四号及び一六五号事件)され、前記事情により堀尾茂一を相手方として裁判上認知の申立(上記五二〇号及び五二一号事件)をし、それを認容する審判が確定したことからこのほど漸くそれぞれについて出生届が提出され、二子はいずれも「父堀尾茂一、母山本すみ子」として母すみ子の戸籍に登載され、「山本」の氏を称することとなつた。
2 前記事情から事件本人らについて堀尾茂一との父子関係が創設され、また現実にも事件本人らは生後いまに至るまで父茂一に監護養育されており、ほかに事件本人の今後を託せる者は存在しない。民法八一九条四項は父が認知した子に対する親権について父母が協議で父と定めることができる旨の規定であるが、その協議をするにも母すみ子が所在不明のため果し得ない実情にある。
二 事件本人らについては既に「親権を行う者がないとき」にあたるとして後見人が選任されているが、前記事情により父として、親権者たりうる者の存在することが明らかとなり、その者が事件本人らの監護養育にあたつている事情が明らかになつた上は、家庭裁判所はその者につき民法八一九条五項にいわゆる協議にかわる審判によつてこれを親権者と指定し後見を終了させることができるものと解する。
よつて、本件申立はいずれも理由があるものと認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 岩川清)